事実は一つ、真実は複数。
広い視野で法の作用を読み解き、社会に活かす。
法と社会の関係を考察するから、法社会学
2018年10月に赴任された山田恵子先生は、さまざまな手法で法社会学の研究を進めておられます。「法社会学とは、法が現実の社会の中でどのように作用しているかを、経験的社会科学の方法を用いて明らかにする学問です。そのための多彩なテーマや方法論の中から、私はまず法律相談の場面に着目し、インタビューや観察等を通じて法の専門家と一般市民とのコミュニケーション過程を明らかにしようとしてきました」と、先生は自らの研究プロセスを振り返ります。3~4年次を対象とする「法社会学」の講義でも、法律相談や調停のロールプレイを交えるなど、机上の学習にとどまらない実践的な手法が活用されています。
条文や判例が掬い取れない「人の思い」に寄り添う学問
山田先生が法社会学に惹かれた理由は、条文や判例の枠内ではとらえきれない「法の真実」を探る法社会学の姿勢に可能性を感じたことにあるといいます。「たとえば交通事故の被害者を法律によって救済する手段は、金銭による賠償以外にありません。仮に被害者のいちばんの願いが再発予防策の確立にあったとしても、法律はその願いに応えられませんが、そのままでいいのか?法には何ができてできないのか?こうした問題意識に基づき、条文や判例の枠を超えた広い視野で事実の背景を検証するのが、法社会学的なアプローチです。この取り組みから生まれた知見が、新たな問題提起や政策提言につながることも少なくありません」と、先生は法社会学の持つ可能性の広がりを説明します。
非法律家の視点で、視野を広げる
先生はまた、学ぶ姿勢の面からも、法社会学によってもたらされる別の可能性を示唆します。「多くの場合、法律学習は法律家の専門的視点と知見を学ぶことですが、法社会学を学ぶ上で重要なのは、非法律家の視点です。法社会学の世界でしばしば“事実は一つ、真実は複数”と言われるように、条文や判例の制約にとらわれず、幅広い角度から問題への考察を深めるうちに視野が広がり、柔軟な思考法が身に付きます」。先生の授業を受講したある学生は、“法律は無味乾燥なものだと思っていましたが、そうじゃないことがわかりました”と、感想を述べたそうです。
「皆さんと同様、まだまだ私も学びの途上にいます。最近、ある先生の“自分を大切にできない人が他者を大切にできるはずがない”という言葉に感銘を受け、自分を大切に、自信を持てる体験を積もう、他者に自信を与えられるような人になろうと、思いを新たにしました。ぜひ私と一緒に、学びを深めましょう。」