「そういうことだったのか」
「悩ましいけど興味深い」
そういった素朴な感覚を学びに繋げてほしい。
ロースクールから研究者の道へ
法学部で刑法ゼミに所属し、何か専門性のあることを学びたいと、研究と法曹の両方に関心を持つようになった。その後法曹を目指すロースクールに進学、学ぶうちに研究への意欲が固まり、2016年に修了すると、博士課程に進んで研究者を目指すことに決めた。研究領域は刑事訴訟における「証拠」。例えば、人が見聞きした内容は、見間違いや記憶の変化によってゆがむことが珍しくなく、原則としてしっかりと証人尋問等の手段で吟味しなければならない。そして、現在、そのような吟味が必須な証拠と、吟味をせずとも採用して良い場合がある証拠との区分けなどについて考察を進めている。
多角的なものの見方を身につけてほしい
ゼミでは実際の有名な事件も素材とし、それらに関するルポルタージュなども取り上げながら、批判精神を持ちながら物事を考える方法を学生に伝え、同時に、一緒に学んでいる。例えば、ライターの視点から事件を見つめ、その分析や正義感に共感を覚える、そういった感覚ももちろん大切な前提だけれども、一方で、異なる立場の事件関係者の意見を調べてみると、事件の全く違う側面が見えるかもしれない。一見とんでもないことを言っているように見える人でも、視点を変えれば全くの正論を言っているのかもしれない。自分が感覚的に正しいと思ったものと逆の理屈に立って考えるとどうなるか、このように考えることの大切さを意識し、ニュースやこれまでの事件についても、一つずつ理解を深めることで、角度を変えて物事を見られる力を身につけてもらえるように、と考えている。
基礎的な科目の授業では、具体的な法律のイメージを掴んでもらうため、教科書の練習問題をその場で解かせるなどして、焦らず着実な学習をしてもらうよう心がけている。法務コースの授業では、司法試験を目指している学生にも対応できるよう、問題を毎回準備し、積極的に演習に取り組むことができる形にしている。法的文章の作り方にも重きを置いており、受講生皆に、文章の書き方や、刑事訴訟法の最低限の知識を身につけてほしいと思い、希望する学生に対して個別に文章を添削する時間も設けているという。
みちすじを見つける手助けのできる教員に
2022年から西南学院大学で教員となり、九州にも住むのも初めての佐藤先生。教員として「私自身は羅針盤というほどの大きな存在ではないが、学生自身がみちすじを見つける手助けができる存在になれれば」と抱負を語る。教員として、これをするべきだ、と方向性を示すのではなく、知識や経験を通して、学生が主体的に進む道の手がかりとなるもの、進む道を考える素材を提供できる存在を目指しているという。西南学院の学生の特徴のひとつについて、「一冊の本を読むだけでも、こんな見方があるのか、と驚いて吸収してくれる素直さがあること」と話す。専門的に学びたい人はもちろん、そうでない人も社会人として社会とつながるような専門的な知識をしっかり身につけてもらえれば、と語る。