ポテンシャルが高い西南大生に
グローバルスタンダードを経験させたい
国際公法における世界最高峰で研究
根岸陽太先生は、2017年夏まで国際公法の研究施設があるドイツ・ハイデルベルクで2年余り研究員をしていました。それも、実績のなかった大学院博士課程就業1年目に、研究分野では伝説的な存在という教授の推薦を受け、国際公法分野では世界一と称される研究所で研究員になることを認められた偉才です。
サークルで磨いた問題意識
高校時代は漠然と「将来は弁護士がいいかな」と思っていたそうですが、大学進学後のある偶然が運命を大きく揺さぶります。それは、新入生歓迎時のこと。サークルの勧誘で約100枚のチラシを受け取った根岸先生は、直感的に一枚を抜き取り、「卒業生に弁護士が多数いる」とアピールしてあった『国際法研究会』に入ることを決断します。主に模擬裁判をしていたそのサークルのディベート力は日本屈指で、そのレベルは東大や京大にも勝るほど。日本代表としてアメリカ・ワシントンで行われた大会にも出場していました。根岸先生曰く「本当にできる人が集まっていましたね。授業で情報収集、サークルで応用をやっていた感じでしたから、実務的に必要な能力はすべてそこで養ったといっても過言ではありません」。縁あって巡り合ったサークルで知見を磨き、ワールドワイドに活動の場を広げていった根岸先生。そのうちに弁護士よりも、中立的かつ長期的な立場で問題に向き合うことのできる研究者になることを志すようになったといいます。
世界基準の立ち居振る舞いを伝えたい
まだまだ研究に専念しても許される若さながら、「日本の学生の教育がしたい」と大学に赴任したその理由は何だったのでしょうか。
「模擬裁判のサークルが国内大会で優勝して、初めてアメリカに行ったのが20歳の時でした。そんなに言葉ができる方ではなかったので英語は散々でしたが、理論はいいと褒められました。その後も海外に出て、たくさん恥をかいて、辛い思いもしましたので、そういう経験を日本の学生と共有したいと思いました。今の学生たちは以前よりも言葉の壁がなくなっていると思いますが、論文の書き方や国際会議での立ち居振る舞い、企業人同士の空気感の違いなど、言葉ではない部分を突破する力も身に付けてほしいと思っています。」
大学は受講学生の人数が多いため、どうしても教授陣からの一方向になりがちですが、根岸先生の講義は学生の考える力を養うため、積極的にアクティブラーニングを取り入れています。また、ゼミでは先生肝入りの模擬裁判を実施。アジアから10チームしか出場できない、スイス・ジュネーブの国連本部で行われるネルソン・マンデラ人権法模擬裁判大会に出場することを本気で目指して活動しています。「学生もやる気になっていますし、現実的に出場できるレベルに近づいていると思いますので、法学部の学生をオープンに募って、皆でワイワイとスキルを磨いていきたいと思っています。ジュネーブも単なる憧れではなくて、自分たちで鍛え上げた論理を試す場。ほかの大学にコンプレックスを持つ必要はありませんし、西南生のポテンシャルは高いので、戦うべき相手は世界中の頭脳だと思います」。グローバルスタンダードを経験してきた根岸先生の手にかかれば、西南生の見据えるべき基準は、あっという間に固定概念を越えていきそうです。