法律学の世界で求められるもの。
それは研ぎ澄まされた人権感覚と回帰的な視点
知識だけでなく現場を皮膚で感じて
多くの知識と勤勉さを必要とする法律学の世界。しかし、知識を詰め込むのではなく、「皮膚感覚を磨くことこそが大事」と話すのは、平井佐和子先生です。その言葉が意図するものとは「法学を学ぶなら、想像力を豊かにする必要があります。そしてそれがただの妄想にならないためには、感覚(センス)を現場から学ぶことが重要。実際の現場を見て、身体で感じたことは、机の上では分かりません」と、学生にはリアルな世界を知ることを促しています。とはいえ、学生の身では、なかなか実践的な現場に身を置くことはできません。そこで平井先生は、ゼミ生を伴って刑務所やハンセン病の療養所を訪れたり、さまざまシンポジウムを企画するなど、生きた情報や声に触れる場を数多く提供されています。
常識に捕らわれない
さらに「ぜひゼミに入ったら、常識に捕らわれない視点を持つことや、逆の視点や意見を取り入れる機会にしてほしい」と平井先生。法の世界ほど、常識が求められる“はずだ”と思っていましたが、「今まで培ってきた常識って、まずどこから構築してきたの?ということなんです。悪いことをしたら罰せられなければならないという考えはどこから生まれているのか。まずそこに疑問を感じることが大事ではないでしょうか。社会規範は一つではないし、何が正しいか考えるときは、常に回帰的な目線をもてるよう、特に1年生は常識を覆す作業が主となりますね」。
自分投資を積極的に
「憲法や人権を学びたい」と法学部への進学を志した平井先生も、学生時代に数多くの現場を訪れたことで、人権感覚がもっとも必要とされる刑事法に魅力を感じるようになったといいます。また、アジアや子どもの買売春問題に関心をもって、1年間タイへ留学した経験も。「私自身、いろいろな場に連れて行ってもらいましたし、誘われたらどこにでも行きました。それは、あとあと生きてくるもの。“時間を投資する”ということに、もっと積極的になってもいいかもしれません」。