2026/01/15(木)
武井槙人先生による講演会が開催されました。
1月15日(木)2限に、モンテレイ工科大学 政治学・国際関係論学部助教・武井槙人先生による講演会が開催されました。講演のテーマは「安心供与の国際政治学―国家はいかにして平和にコミットできるのか」。近年の平和主義をめぐる動向について、「安心供与」という観点から、実験結果を交えてお話しいただきました。
日本は第二次世界大戦以前には好戦的な傾向がありましたが、戦後は平和主義を掲げ、軍事行動にも抑制的な姿勢をとってきました。しかし近年は、防衛費の増額や憲法9条改正をめぐる議論など、従来の平和主義から逸脱しているのではないかという指摘がなされています。
では、国家が平和へのコミットメントから逸脱した場合、何が起きるのでしょうか。ここで重要となるのが「安心供与(assurance)」という考え方です。安心供与とは、他国に対して自国が攻撃的意図を持っていないことを示し、安心させるための戦略です。これに失敗すると、強制外交の破綻、安全保障のジレンマ、さらには戦争の発生といった負の結果を招く可能性があります。逆に、平和主義を実践することは安心供与にもつながるとされます。
主流の国際政治学が「武力の行使による平和」を前提とするのに対し、安心供与の国際政治学は「武力を用いないことで平和を実現する」点に特徴があります。しかし、安心供与をめぐる理論・実証研究はまだ多くありません。武井先生は昨年ご自身が発表された論文をもとに、アンケート調査と実験を組み合わせたサーベイ実験による日中関係の分析結果を紹介してくださいました。
実験では、平和へのコミットメントから逸脱すると、他国からの信頼を損ない「国際評判費用」(国際社会から約束破りとして評価が下がることで生じる政治的コスト)が増大することが示されました。そして、この国際評判費用の存在が、他国への安心供与につながる可能性が示されたとのことです。
講演の最後には、「国際平和のために、私たちに何ができるか」という問いかけがありました。私はこれまで、各国間の勢力均衡や安全保障の強化といった発想しか持っていませんでしたが、安心供与というアプローチも重要な選択肢の一つであることに気づかされました。
今回の講演を通じて、論文の実験結果から安心供与の源泉としての国際評判費用について学ぶことができました。これまで私は、平和主義について歴史的事例からしか考えられていませんでした。しかし、数的な分析によって現在の状況や今後の展望を読み解くことができることを知り、大きな刺激を受けました。この講演をきっかけに、今後は異なる角度から国際政治を見つめていきたいと思います。
(法学部国際関係法学科2年 菰田美海)

